Sea of Tranquility

しずかのうみ

重力ピエロ

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

伊坂幸太郎さんは東北大出身で現在も仙台在住、仙台市近郊が舞台の作品もいくつか上梓されていて、宮城県内をロケ地に選んだ映画化作品もあり、そのロケ地には私が仙台に住んでいた頃よく通っていたカフェも使われたと聞き、いつか読んでみたいと思っていました。 最近お知り合いになった語学仲間もこの方のミステリを読んで「面白かった」と評されていたので、この機会に1冊手に取ってみました。電子版ですけど。

「連続放火事件の真相」に迫るつもりで読んでいると、「放火のルールには厳格だけどミステリのルールにはゆるふわなのかな」と思ってしまいますが、この作品も私が最近立て続けに出会っている本たちと同様「一発大逆転」の仕掛けを秘めた構成になっていたと思います。そこを楽しめるならラストでは溜飲が下がるかもしれません。 あとは、登場人物が傾ける蘊蓄やト書きに張り巡らされた他作品の引用が楽しかった。私が知っているものも少しだけありましたが、初めて知るものも多数。井伏鱒二の「山椒魚」は読んでみたくなりました。 身内にがん患者がいた経験を持っていると、結末にはいろいろな思いが交錯すると思います。そのあたりの描写がうそっぽくなかったことが、少なくとも私にとっては救いとなりました。

以下ちょっとネタバレ。 「テロメア伸びろ~」だけ祈願したらがん細胞のも伸びちゃうんじゃないの?と心配した私は的外れなのだろうか。そもそも狙った細胞だけを、祈りでも医療行為でもなんでもいいけど操作できるんだったらいろいろ全部解決じゃん。とか。 女の子の造形がおしなべて平坦な印象。みんなそれなりに容姿がよくて思い切りもよいけど、そんな子ばっかりじゃないでしょうに。ちょっと残念。