Sea of Tranquility

しずかのうみ

パプリカ

パプリカ (新潮文庫)

パプリカ (新潮文庫)

STAP細胞とその発見者が世間の耳目を集めている時期に、誰かがこの小説の内容と関連づけていたのを見かけて、興味を持ちました。ノーベル賞候補と目された美人研究者、千葉敦子嬢の描かれ方と重なる部分があったのでしょうか。 断筆前後の筒井先生には実はあまり注目していなかったので、この作品も未読でした。久しぶりの筒井作品でしたが、比較的最近の作品とは思えないくらい絶好調な筒井節で、往年のファン(笑)としては満足です。(なぜウエメセ…)

読中たまたま近くにいた人から「SF?」と訊かれたんですが未知の、そしてたぶん実用はされないであろう機械の存在が前提のお話なのでまあ確かに広義のSFなんだと思うんですが、なんなんでしょう、筒井康隆だからエログロナンセンスですよね。で、最後は妖怪大戦争みたいになってました。途中のドタバタぶりとは一転して静寂な筆致で迎えたラストは品があってよかったです。 筒井先生の心理学、精神病理学の知識がすごい。ちょうど自分でも勉強している部分と重なっていたのもあって、読み終わってもしばらくは夢と現実が混在しているような感覚でした。 前段でSTAP細胞騒動との関連性について触れましたが、結果としては筒井作品よりも現実の方がナンセンスといった結末を迎えてしまったのは残念ではありました。

科学技術の自走性に対する科学者としての反省がまるでない。最先端を走る者の自負しかないというのはね、それはね、科学者として恥かしいことなんですよ。