Sea of Tranquility

しずかのうみ

集団の心理学

集団の心理学 (講談社現代新書 (714))

集団の心理学 (講談社現代新書 (714))

うちの書棚にはときどき「なぜ私はこんな本を買ったんだろう?」と不思議に思うような本がある。
この本と、もう一冊、講談社現代新書の別の本もそれ。
新品で買ったのだとしたら、この本が出版された頃の私は何を期待して読み始めたんだろう。うーん。まだ今ほど心理学を勉強する気にはなってなかった気がするんだけどな。
それとも講談社に何か魅力を感じて2冊も買ってしまったのだろうか。謎だ。
今読み返してみたら、心理学者の磯貝芳郎先生による、グループダイナミクスを題材とした本だった。題名通りではある。
刊行された年代からしても内容に新しいものはない。ミルグラムのお馴染みの電気ショックを与える(と見せかけて本当は与えない)実験とか、ジンバルドのスタンフォード大学囚人実験とかが紹介されていて、心理学書としては古典だ。
しかし磯貝先生は執筆当時の時代背景を事細かに描写してくださっているので、戦後から昭和後期にかけて日本は、外国は、どんなふうだったのか、空気感のようなものまで感じられてとても興味深く読み進めた。
ドイツの話も出てきたけど、当然西独だよねー、とかね。
磯貝先生は東京文理科大学卒、武蔵野美大を経て執筆当時は東京学芸大学教授でいらした。東京文理科大学?さすがの私にもわからず調べました。私がわかったのはこの後再編された東京教育大学から。今の筑波大学ですね。
こんなところにも時代を感じました。
このままでは本の内容に全然触れないまま終わりそうなので少しだけでも。
グループダイナミクスというのは、割と不変なものなのかもという印象でした。この時代において考察された内容は、ほとんどが現代でも通用しそうです。新入社員が毎年ナントカ型、と揶揄されるようになったのがいつ頃からかわかりませんが(今年はドローン型でしたっけ?)毎年違う個性の新人が入ってきている割には、職場で起きてることって昭和の時代とあんまり変わらないかな。制度や世論などの環境要因は大きく変わりましたが、集団の中で個人がどう振る舞うかが集団の方向性に与える影響というものには、大きすぎるほどの差異はないのかもしれないなー、と思いながら小一時間で読了。磯貝先生すみません。細かいデータは割と読み飛ばしました。