Sea of Tranquility

しずかのうみ

シン・ゴジラ

私もともとあんまり庵野秀明さん好きではなくて…。ナディアもエヴァもそんなに真面目に観てなかったし。社会現象としては注目していましたが、どこか冷めた目で見ていました。

今回も「シン」なんてカタカナでくっつけちゃうような自意識を食わず嫌いしてそのままスルーするところでした。あぶなかった〜。

というわけで観てきました「シン・ゴジラ」。

結論から言うと、面白かったのです。それもかなり。

観る人によってどこがツボなのかはかなり変わると思うんですが、私が一番評価しているのは、やはり「突如降って湧いた災厄に人間が知恵を振り絞って力を出し合って対処する」というストーリーでした。これは懐かしの「ガメラ2」の流れを踏襲していると勝手に思っています。平成ガメラ三部作では、2だけが唯一と言っていいほど、「自衛隊と民間人の協力が事態の収束に一役買う」という話なのですが、私はこの展開にめちゃめちゃ燃えたのです。なのでただのファンタジー映画になった「ガメラ3」にはがっかりしました。まあそんなことはどうでもいいんですけど。あっ、もっとどうでもいいけど「ガメラ2」もこの「シン・ゴジラ」も特撮というか特技監督樋口真嗣さんです。私昔お会いしたことあります。それもどうでもいいですね。

なので極論、ゴジラの造形とかセットの緻密さとか美術の描き込みとか割とどうでもよかったんです。白組のCGだけは高く評価します。さすがでした。

シナリオがリアルだとかいうことですが、ここは言及すると自分の身バレにつながるのでスルーします。はい。

石原さとみの英語力。それもどうでもいいです。あれ?シナリオはリアルじゃなかったの?と突っ込む気にもなりません。たぶんリアルなのは日本政府だけで、アメリカとかその他の国(実々2か国しか出てきませんが)はゴジラ同様ファンタジーなんです。でも金髪のオネーチャンが出てきて流暢な日本語を喋ったらむしろ別の意味での説得力が生まれてしまうので、あれは石原さとみでよかったんです。

本当に私が痺れたのは、ゴジラをアレするためのアレを日本中のアレに頭を下げてお願いしまくるところとか、JRのアレを惜しげもなく使ってゴジラをアレするところとか、米軍がアレを気前よく投入してアレしまくるところとかなんです。人間が、変なプライドや見栄を捨てて、みんなで本気を出したら何かができる、というシークエンスになぜか心が惹かれてしまうんです。普段は団体行動大の苦手なんですけど、ガメラ2にしろシン・ゴジラにしろ、言われてやる団体行動じゃない、隣の人と足並みを揃えるような団体行動でもない、メンバーが自分の得意分野を黙々とこなしていって結果を出す、そこが今作で一番私のハートをわしづかみにしたところでした。

しかし最終段階のあの作戦は、ゴジラさんがあの場所にいてくれなかったら成立しなかったと思われるので、ちと予定調和だったですかね。

ところで今作の脚本を書いていた時点ではまだ英国のEU離脱なんていう話は影も形もなかったものと思われるんですが、日本の命運を握ったアメリカ以外の国っていうのが独仏で、イギリスのイの字も出てこなかったことが暗示的だったなーなんて思いました。