Sea of Tranquility

しずかのうみ

<動物のいのち>と哲学

 「犬も飼ってるし動物好きだから〜♪」という理由で選んだわけではありません。

“動物のいのち”と哲学

“動物のいのち”と哲学

 

 ウィトゲンシュタイン研究者のシンポジウムに無謀にも参加したところ、ちょっと他の人とは違うアプローチをしているウィトゲンシュタイン研究者としてこのコーラ・ダイアモンドさんの名前が上がっていて、どんなんなんだろ〜、と興味本位で手に取りました。

そして一応一回目を読み終えた今、哲学の初学者には刺激が強すぎてくらくらしているところです。

この本は、コーラ・ダイアモンドが、ノーベル文学賞受賞者である作家、ジョン・マックスウェル・クッツェーの著書『動物のいのち』(これがまた厳密には著書ではないのですががが)を題材に書いた論文と、その論文に対して4人の哲学者(ひとり英語学者がいるけど)が寄稿してできた論文集です。(ここから敬称略にします)

そもそもクッツェー著作自体が、プリンストン大学で行われた講演と、5人の哲学者や文学者、心理学者などによる論評でできていて、ここでダイアモンドたちが問題にしているのはクッツェー自身の主張でありながら、彼が作中の架空の人物(オーストラリア生まれ、ベジの小説家エリザベス・コステロ)に代弁させている内容という入れ子の中の入れ子状態ですので、ダイアモンドたちが挙げる人名も実在の人物と架空の人物が入り乱れており、何が何だかわからなくなってきます。そして古今東西の哲学者、小説家、芸術家などの代表作についてほんのりと、ただし論旨に密接に関わる形で紹介されているので、人名と作品名が怒涛のように溢れ出してきて圧倒されたまま読み終わってしまいました。いかん。

学校の教科書に出てきた人、名前くらいは聞いたことがあるけど何をやっていたかよくわからない人、そもそも初めて名前を聞いた人、リストアップしたら30人くらいになりました。(クッツェーが創作した人たちも含む)

哲学者は文学的素養がないと深みのある論文が書けないのでしょうか。シェイクスピアとかリルケとか。

中でもテッド・ヒューズという詩人の詩は何度も引用されています。

文学作品もちゃんと読まなきゃね、という反省と、今後哲学関連の人たちはちゃんと勉強して、できれば著作の一編でも読んで、そこからだなーという感じです。クッツェーも読んでみたいかな。

 

動物のいのち

動物のいのち

 

 

恥辱 (ハヤカワepi文庫)

恥辱 (ハヤカワepi文庫)

 

あっ、翻訳鴻巣さんだ。これは読まなくては。

文学部の学生さんで(まあうちの大学にはいないかもしれないけど。そもそもクッツェーは何文学なのやら。英語で書かれているけど英米文学なのか?)クッツェー研究したい人は読むといいです。オススメします。

私は、今回は図書館で借りて読んだんですが、これは買って何周かしないとわからないと思いました。3周目くらいまで辿りついたら何かわかるかも。