お次はこれです。
オースティン読んだのも実はこの映画を楽しく観るためでしたw
タイトルの通り、18世紀イギリス文学の傑作『高慢と偏見』をゾンビ映画にしてしまうという、それこそオースティンファンが怒って襲撃してきそうな作品です。
映画の原作もちょこっと読んだのですが、ほぼほぼオースティンの『高慢と偏見』のストーリー展開に沿って話が進みます。ただし時折ゾンビの襲撃がインサートされます。こういう作り方をマッシュアップというそうで…本当に、なんなら一言一句オースティンのものを使いつつ、ゾンビもちゃんと出すという、なんというか、そんなにゾンビ出したかったのか原作者、という感想しか出てきません。
映画の原作はまだ途中までしか読んでいないので、ここからは映画のお話。
冒頭からいきなり銃の手入れをするうら若き乙女たち。日常生活にゾンビからの襲撃がイベントとして組み込まれているので、武器の手入れは欠かせません。舞踏会をやっていてもゾンビが乱入してくる、油断のできない世界観です。
ベネット姉妹は中国で修行を積んだ対ゾンビ戦のエキスパート。お金のある人は日本で忍者の修行をして、お金のない人は中国で拳法を習うらしい。ベネット家は中流で小金持ちではあるけど、娘を日本に送り込むほどの余裕はなかったようです。
途中、お金がなくて中国で修行したエリザベスを揶揄するシーンがあるのですが、そこではオースティンの『エマ』からの引用が使われてなおかつ日本語訳までされている(お金持ちは日本で修行をするので日本語をたしなむという設定)。それにエリザベスは(明らかに吹き替えの)中国語で応対します。ちなみにエリザベスは「河南省少林寺で修行しました」とか言っていました。そのシーンで引用される『エマ』からの一節はこちら。
One half of the world cannot understand the pleasures of the other.
2時間弱の映画の尺でゾンビも出しながら『高慢と偏見』もやらなきゃいけないので、多少端折ってあります。大事な部分はちゃんと押さえてあるのでオースティンファンにも安心ですよ。何がだ。(そういえば前エントリで言及し忘れていたんですが、オースティンもミラン・クンデラみたいに小説の中で作者として一言申し述べたりする人だったんですね。「本書は〜なので…」といきなり説明が入って『ヤッターマン』かと思いました)
重要人物の役どころがちょっと違ったりしていますが、映画を観た人のレビューによると「この方がスッキリする」とあったので、なるほどそうなのかも、と思ったり。わかりやすい悪役が登場します。その人、オースティン版ではただのケチな小悪党だったんですけどねえ。
確かにオースティン版を読んでから観た方が楽しかったです。
オースティン版の映像化決定版は、BBCが製作したもののようですが、この映画も変なところはきっちりオースティン版を踏襲していてなかなか面白いです。ゾンビがお嫌いでない方はぜひ。
レーティング低めなのであまりストレートなグロ描写も出てこないし(ただ脳みそ食べるシーンだけはちょっとなー…)それにも増してロケ地が風光明媚なのと、衣装や調度品がきれいなのと、馬がかわいいのと、エリザベス役のリリー・ジェームズがクールビューティなのと、俳優さんたちがみんなきれいなクイーンズイングリッシュをお話になるのでいいですよ〜。
プロデューサーにはナタリー・ポートマンも名を連ねています。さすがハーバード卒で6言語を操る才媛はこういうお遊びも楽しむ余裕があってよいですね…。(最初はエリザベス役だったらしいけど、降りてプロデュースに回ったみたいです)
現在オンラインシネマサイトなどで、300円台で観られます。詳しくは映画公式サイトで。