Sea of Tranquility

しずかのうみ

ダンケルク

第二次世界大戦ダイナモ作戦の映画です。

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ダンケルクはフランスの地名で、場所はフランス最北部のノール県。すぐお隣はベルギー。西フラマン語で「砂丘の教会」という意味だそうです。ダンはdune、ケルクはchurchです。Dunkirkダンケルクと読ませるの無理やりすぎない?と思うでしょ。でもフランス語ではDunkerque、ドイツ語ではDünkirchenなんですよ。この2ヶ国語ではむしろ「ダン」とは読みにくいですね。

このダンケルクに、ドイツ軍に侵攻された英仏軍の兵士34万人が追い詰められました。陸路は既に断たれ、海へ逃げるしかない。戦局から言ってもどうもこの戦線は見捨てられモードで、本国からの大型船は1隻ずつちょこちょこっとしか来てくれない。海に逃げても空からはドイツ空軍の戦闘機と爆撃機が狙っていて、船ごと爆破されてしまう。どうするイギリス!とフランス!

しかしこういう説明は一切されず、セリフもかなり抑えめで、全編にみなぎる緊迫感。背景とかどうでもいい、とにかく大変なんだ!という映画でした。

この映画は3つの視点から描かれます。防波堤(陸)、海、空。

防波堤の時間軸は1週間、海は1日、空は1時間。これが結末に収束していくんですが、改めて思い出すと海の描写がなかなか濃くて、あれって1日だったんだー!って驚いてしまいました。海の主人公は小型船のオーナーであるミスター・ドーソンとその息子とその友達。船に救助されたやさぐれイギリス兵士のキリアン・マーフィーがいい味出してます。こういう役うまいですよねこの人。

友達、最後に報われたので、よかったな。

空の方はほとんど空戦です。昔の航空機はバックミラーがついている(笑)特にスピットファイア(英空軍の戦闘機)はキャノピーが大きくて視界がよく、独空軍の背後に回り込むのを得意としていたようです。敵機であるメッサーシュミットはドイツの博物館で実物も見てきましたが、正直空戦性能の違いはよくわからないです。まあこのへんは空戦オタクだったら楽しかったでしょう。ていうか、ロールスロイス社製エンジンどれだけのものなのかもわかりませんが、丸っこい機体なのにかなりトリッキーな挙動が多くてワクワクしました。イケメンパイロットのコリンズさん(ジャック・ロウデン)かっこよかったけど、ほとんど帽子とマスクで顔がわかるのは後半になってから。しかも空軍、ずっとお空にいたから(最後は海に不時着水するけど)全然汚れてなくて、みんなが重油で真っ黒になったラストに一人だけシュッとしてました。同じ編隊のファリアさんせっかく生き延びたのに、どうなったのか気になります…。ていうか一度も顔出しせず、無線の声だけの隊長はマイケル・ケインだったんですね。ノークレジットなので全然気づかなかった。

陸の方は、ちゃんと名前も出てこなかったトミーくんが主人公なのですが、こちらは1週間分のお話なのでさすがにエピソードが満載でした。ギブソンくんの正体、わたしは見ていてそうだろうなあと思ったそのまんまでした。悲しい。こちらは観てると紅茶飲みながらジャムつきトーストをいただきたくなる展開です。私、なぜか映画館のコンセッションで、あったかい紅茶を買って入ったのですが、大正解でした!

 

しかし全体的に、イギリスはフランスに対してちょっとひどすぎる。未だになんとなく仲が悪いもんね〜。独英仏はなんかそれぞれいまいちな態度ですよね。でもたぶん一番嫌われてるのはドイツ。

スタッフもキャストもほとんどがイギリス人な中で音楽だけがドイツ人のハンス・ジマーです。この音楽が、割と一本調子なのですがそこがまたいいんですよね。時間がない感じがすごく出ていた。

追い詰められた英仏軍30万人をどうやって逃すのか、という緊張感以外にも、逃げ場が海にしかない関係上、海上海中のシーンが多くて、いろんな意味で息苦しい映画ではありました。史実に忠実なので結末はわかりきっているんですが、一人一人の行動を浮き彫りにすることで、すごくドラマティックな映画になっていました。ハマっちゃって何度も観る人がいるのもわかります。わたしももう一回くらい観たい。