Sea of Tranquility

しずかのうみ

ドクター・スリープ

久しぶりのスティーヴン・キング

 『シャイニング』の続編です。

新装版 シャイニング 上下巻 セット

新装版 シャイニング 上下巻 セット

  • メディア: セット買い
 

 どのくらい久しぶりなんだろう。最後に読んだのはどの作品だったかな…。

一番ハマっていたのは10代後半から20代前半くらいだったと思います。当時は新刊の邦訳が文庫化されるとすぐに読んでいました。さすがにハードカヴァーで即買いするほどのコアなファンではなかったけど、高校生の頃に未訳の原書(ペーパーバックですが)を買って一通り読んだりもしていました。これね。短編集ですけどどれも怖くて面白かったです。

Night Shift

Night Shift

  • 作者:King, Stephen
  • 発売日: 2011/07/26
  • メディア: マスマーケット
 

ちなみに現在は邦訳がちゃんとあります。ただし入手は困難。

 トウモロコシ畑は本当に怖いです〜。映画化されたものは観ていません。

話が逸れました。

『シャイニング』はたぶん先に映画を観て、あまりにも怖くて原作も読みたくなったというよくわからない流れだったと思います。学校の冬休み、日付がそろそろ変わりかけていた遅い時間に、上巻だけのつもりで読み始めたら続きが気になりすぎて結局徹夜して全部読んじゃったという思い出がありました。

『ドクター・スリープ』もそんな感じでした。全部一気に買うと一気に読んでしまって他のことが手につかなくなるので、上巻だけKindleで買ってあったんですが、読み始めて止まらなくなるのが怖くて(正直本編よりもそれが怖い)あまり本腰を入れずにいたのです。一章ずつの遅いペースで、1/3くらいは読み進んでたかな。

そうしたらそこからたぶん半年?もっとかも。放置することになってしまいました。

ほんとは今もやることたくさんあるんだけど、ぽかんと空いた時間に、今回も上巻だけのつもりで続きを読み始めたら、今日一日で全部読んでしまった…。(下巻も先月ついに買ってしまったので)

キングの面白さはやはり描写力ですね。相変わらず地名人名商品名などの固有名詞が怒涛のように出てきます。それらが決して余計な情報ではなくて、登場人物の属性や嗜好まで表現してしまうところ。固有名詞に限らず情景の説明力がすごく高いところ。これが読者を惹き込むポイントなのかな、と改めて感じました。

怒涛の固有名詞、アメリカに住んでいたらもっと身近に感じられて、恐怖も一入だったのかな〜。舞台となる場所も、アメリカの中西部、とかナントカ州、みたいな大きい括りではなくホゲホゲ市のアレコレ通り何番地、くらいのところまで具体的に描かれるのがキングのすごいところだなあと思います。これは映像化したくなるでしょうね。その割に成功例が少ないのは、文章で具象化されていると読者のイメージが固定されるので、どう映像化してもなんか違うってことになってしまうのか?うまく説明できませんが。

実を言うと最近、集中力が落ちていて本を読むのに時間がかかるようになっていたんですが、今回はこれもまた久しぶりに、白い紙と黒いインク(Kindleだったけど)だけが視界に入って他は全然見えない聞こえない、みたいな過集中っぽい状態を味わえましたし、後半では登場人物の身体に起きる変調を追体験するような感じにもなりました。ああ、しんどかった。

ではちょっとだけ内容をご紹介します。

前作はコロラド州の雪に閉ざされたホテルが舞台の純然たるホラーでしたが、今作はサイキックバトルアクションです。

不老不死に限りなく近い異能集団(トゥルー・ノット)が、かつては苦もなく得られた糧にも事欠くようになり、更に不老や不死も脅かす新たな危機に見舞われ、自らの存続を賭けて「かがやき」(彼らの不老不死状態を維持するためのエネルギー源)を勝ち取ろうとする…これはトゥルー・ノット目線。

オーバールックから生き延びたダニー・トランスは父親同様酒浸りになり、定職にも就けず各地を転々としていたけどとある少女との邂逅を機に、両親との関係、ホテルでの出来事、自身の能力と向き合うことになる…これはダン目線。

小生意気で癇癪持ちの中学生、アブラがかわいいです。

私、今回も先に映画の予告編を観てしまったのですが、映画ではアブラはカラードなんですよね。原作ではブロンドに青い目のコーカソイドです。これって、PC配慮?


DOCTOR SLEEP Trailer (2019)

ということは映画では原作の「アレ」をなかったことにするのかな?そういえば前作にも映画にも出てくるあの4文字(日本語)/6文字(英語)が出てこなかったなあ?

後半ではそれはあまりにもご都合主義でしょー!とつっこみたくなるような伏線も出てきましたし、前半はダニーがひたすらアルコール+自分と戦うだけ、トゥルー・ノットはヘラヘラ楽しそうに暮らしているだけ、アブラは時々ダニーのところに遊びに来るだけ、というちょっと読み続けるのが苦痛なほど動かない展開もあったんですが、中盤からクライマックスまでは中断するのももどかしいほどにドキドキハラハラできる、読みごたえのある一編でした。

さーて映画も観ようかなあ。