Sea of Tranquility

しずかのうみ

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

たまたま時間が空いていたとはいえ公開初日に観に行くとは…

TVシリーズも外伝公開のタイミングで配信されたものを後追いで観たくらいで、そんなに思い入れはなかったんですけどね。

violet-evergarden.jp

壮大にネタバレする予定なのでこれから観る予定のある方は観てから読んでね☆

 

劇場版は、本編でも1、2を争う「泣ける回」の続きから始まります。予告編でギルベルトの存在は匂わせているので再会はするんだろうなあと思いつつ観てましたが、3つくらいのエピソードが同時進行(時間軸の違う話も含まれているので厳密に同時ではありませんが)する中でいったいどのようなタイミングで再会に持っていくのか?2時間20分くらいの長尺でしたが、中だるみすることもなく流れに引き込まれました。

とはいえ席一つ空いた(コロナ対応)隣に座っていた男性は途中気持ちよさそうな寝息をたてて寝ていましたが…。徹夜明けか?

えーとまず突っ込みどころから。

相変わらずヴァイオレットの義手だけがこの世界の中でオーバーテクノロジーでした。なんといってもTVシリーズ本編ではまだ電気が普及していなかったのです。電気という小型軽量なエネルギーを使わずして、どうやって義手の細かい動きを制御してるの?人体と何で接続してるの?謎は尽きません。映画ではついに電話が登場し、手紙は時代遅れのコミュニケーションになろうとしています。ガス灯の代わりに電灯も使われ始めました。だからさ、あの義手は…?

演出目的とはいえ手紙がしょっちゅう風に飛ばされるんですけど、あの強風に煽られたら古い紙はちぎれるんじゃないかな〜。

まあこのへんはこの作品のもつ雰囲気にも関わっているので、変えてしまったら元も子もない部分ではあるんですけどね。

総じて美術がすごい。きれい。素晴らしい。特に後半、空や海がほんとうに美しかったです。

音楽なんですが、これが、ほとんど耳に残っていないんですよ。これって逆にすごいことじゃないですか?ストーリーになじんでいて、耳に引っかかるような大げさなフレーズがなかったっていうことですよね。観終わってから気づいてちょっと鳥肌でした。

ストーリーですが…

自分の気持ちを素直に表現しよう。伝えたい相手がいつまでも伝えられる距離にいるとは限らないんだから。

というテーマだったと思います。

同時進行していた3つのエピソード、どれをとってもそのテーマが通底していました。

各エピソードの主人公たちは、不器用ながらもちゃんと相手に伝えることができて、よかった。伝える手段として手紙はとても有効でした。電話どころかメールが普及した今でも、やっぱり自筆の手紙ってなんていうか、もらうの嬉しいですよね。書くのも大変だけど。

そして、この映画の主人公が、ストーリーを通じて人間的に成長する人たちというくくりだとしたら、今回はヴァイオレットというよりギルベルトだったのかなあと思います。あとは、お兄ちゃんね。

再会のシークエンスもなかなかぶっ飛んでいましたが(手紙が丘やら山やら海やら越えて飛んでいくくらいには)この子ならこのくらいやっちゃいそうだなあと思うような行動だったし、これが世界観というやつか…?

でもずーーーーっと会いたかった人にやっと会えたら言葉なんて出てこないですよね。

今までのヴァイオレットなら無味乾燥な事務連絡をしそうなところを、泣きじゃくってあわあわしてしまうなんて、感情面が成長したんだね…と親戚のお姉ちゃん目線で見てしまいました。

原作とは話の進み方が違うようなので、ラノベはちょっと苦手だけど、読んでみようかなと思います。

あえて触れずにいようかと思いましたが、最後のスタッフクレジットを見ているとやはり事件のことを思わずにはいられませんでした。公開にこぎつけた関係各位のご尽力に敬意を表するとともに、犠牲になったスタッフの皆さんのご冥福をお祈りいたします。