Sea of Tranquility

しずかのうみ

ひとさらい

最近フランス文学づいてました。

過去にはサガンなんかを読んでみたことはありましたが、正直あまり印象に残っていません。

コレットの『青い麦』の方が好きでしたね。しかしフランス人って自由ですよね…。

 

ひとさらい (光文社古典新訳文庫)

ひとさらい (光文社古典新訳文庫)

 

この物騒なタイトルの小説は、タイトル通りのお話です。南米出身の職業軍人、ビグア大佐は、親に捨てられた子供を拾ってきて養子にして育てるのが趣味でした。妻帯者ですが、実の子には恵まれていません。さらってきた子を本当の子供に見立てて、出産の時は大変だったよねえなんて妄想を語り始めて奥さんにドン引きされるファンタジー親父です。

ある日、裕福な家に生まれたのに、父親が早くに亡くなって、母親は寂しさを紛らわせるためなのかどうかよくわからないけど社交界で遊びまわっていて、雇われた子守に育てられているだけの寂しい男の子、アントワーヌをさらってきてしまって、たぶんそのへんからいろいろおかしくなっていきます。大佐はアントワーヌの身辺を調べ上げていて、お金持ちでも孤独でかわいそうな子供だとわかってさらっていくわけで、なかなか計画性のあるひとさらいです。アントワーヌ関連では読者がびっくりするようなトンデモ事件も勃発します。いやー驚いた。冒頭ではさもアントワーヌが主人公の児童文学の体ですが、実は大佐の妄想とファンタジーが炸裂する、ちょっとエロいお話なんです。

 

今までさらってきたのは男の子ばかりだったので、大佐は女の子も欲しいー!と妄想して、女子校の校門前でめぼしい女の子を物色したりします。本当に危ないおっさんです。結局、割と合法的に女の子をゲットするんですが、大佐はこのマルセルという女の子に恋をしてしまうんですね。

貞淑で非の打ち所がない(あるとすれば不妊だけだけど、この時代だしちゃんと調べたら実は男性不妊かもしれないですけどー!)奥さんがちゃんといるのに、自分が引き取ってきたフランス人の女の子が一つ屋根の下にいるだけでそわそわして落ち着かなくなるファンタジー親父の描写、作者は何が楽しいのかまったくわかりません。

結末もなかなかすごかった。

あまりネタバレしても面白くないのでここまでにしておきましょう。

フランス人、ほんとよくわからないわ…。

わかる人にしかわからない言い訳をしておくと、課題にはちゃんと自分で着手してから読みましたよ!でも答え合わせには使ったかも。

やっぱり澁澤龍彦版も読んでみたくなりました。