Sea of Tranquility

しずかのうみ

点子ちゃんとアントン

小学生の頃に読んでいたお気に入りの児童文学を再読しました。

昔読んだのは高橋健二さんの翻訳だったと思います。

池田香代子さんの訳は現代的で軽妙でテンポがいいですね。

初読の時は点子ちゃんとアントンの生育環境の格差はあまり気にしていませんでした。まあ、当の点子ちゃんがあんまり気にしていないですからね。でもケストナーは各章の終わりに教訓っぽいコメントを書いていて、そこでは富めるものと貧しいものの対比についても語られていたんですね〜。全然覚えてない。

10代の私だったらケストナーいいこと言うじゃんって思ったかもしれないけど、今読むと「そんなきれいごとで済むかなあ…」という印象を抱いてしまったくだりもありました。

ところでなぜ今読み返したかというと、マリー・アントワネットの発言と言われている「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」Qu'ils mangent de la brioche ! のアネクドートを児童文学の中で初めて引用したのがこの作品だと知ったので、好奇心で選んだというわけでした。この発言はもともとルソーの著書『告白』で紹介されたのですが、そこではマリー・アントワネットと明示されてはおらず、出版当時はまだアントワネット自身わずか9歳でこのような発言ができたとは思えない、よってこの発言はマリー・アントワネットのものではない、というのがもはや定説です。しかし、ケストナーはきっちり「マリー・アントワネット」と名指ししています。一応、マリー・アントワネットは貧しい平民の生活を知らなかっただけなのだというふうに擁護もしているのですが、そもそも別人の発言だと検証されればちょっと濡れ衣ですよね。

そんなわけで、懐かしいお話を読んで、一度だけ行ったことのあるベルリンの街を思い出したり、ペニヒ、マルク時代のドイツを懐かしく思ったりしました。点子ちゃんは破天荒で悪気なく状況をひっかきまわすのがすごい!アントンは思慮深く頭がよく、でも行動力があり機転もきき時には暴力に訴えることも辞さないという理想的ヒーローキャラとして描かれていましたね〜。冒頭では存在感が薄かった点子ちゃんのパパが終盤で大活躍するのも楽しい!

それにしてもアンダハトさんの彼氏、だめんずだなぁ…。

今度は『飛ぶ教室』も再読しようかな。