Sea of Tranquility

しずかのうみ

尊属殺人罪が消えた日

レポートの課題に関係があったので読んでみました。

今思うと、入学前に既にこんな記事を読んでいて

business.nikkeibp.co.jp

事件の概要は大体知ってたんですよね。

この記事は担当した弁護士さんの息子さんに取材をしたもので、当時の様子もよくわかるし、資料としてすごくよくできていると思います。弁護士料がジャガイモだったとか、他のどの文献を見ても書かれていませんでした。

刑法200条を違憲とするしかこの加害者を救う道はないという決断は胸に迫るものがあります。

 

私が読んだこの本は、まだ刑法200条が削除まではされていなかった頃に書かれたもので、ひとまず大法廷で違憲判決が出たところまでの経緯を、やはり綿密な取材のもとに書かれています。

女性目線なので、被害者でもある加害者の立場をとても尊重している印象でした。当事者の女性が明るくて気立てが良くて、前向きに生きていこうとする人だったことには救われる思いですが、反面、こんな父親でも尊属というだけで尊敬して、従わなければならないとは、理不尽にもほどがあるという怒りを感じながら読み終えました。

著者の谷口さんは明治大学法学部出身の弁護士さんで、現在は神奈川県内の法律事務所で活動されています。出版時期が1980年代後半とはいえ、法律を専門とする女性が、この種の事件について取材し、本を書くというのはまだまだ大変なことだったのではないかなと推察します。女性の権利は2017年になった今でも、日本国内であっても、男性と同等のものが保障されているとは言い難いので…。

それだけ、法の下の平等に照らし合わせて、明治時代に制定された刑法を違憲と判断するというのは重いことだったんだと思いますし、このために尽力された法曹界の皆さんにも、こうして記録を残した方にも、感謝の気持ちと尊敬の念を抱きます。

今の日本の法律では、近親相姦それ自体は罪には問われないんですよね。

せいぜい、未成年者に対する淫行が罰せられるくらいでしょうか。

小さきもの、弱きものを守る義務を成人に負わせないところが、動物虐待とか児童虐待につながっているんじゃないのかなあ。先進諸外国から見たらものすごく野蛮な文化だと思います。この辺りも早く是正されますようにと願うばかりです。

 

尊属殺人罪が消えた日

尊属殺人罪が消えた日