素数の音楽
- 作者: マーカスデュ・ソートイ,Marcus du Sautoy,冨永星
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/09/28
- メディア: 文庫
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数学者には数字から音が聞こえ、数列が楽譜に、グラフが風景に見える。リーマン予想に取り組んできた名だたる数学者の生い立ちから丁寧に取材して書かれたこの本を読んでいるとですね、数式や定理が理解できないことが人生のものすごい損失であるかのように思えてしまいます。
寝食も忘れて方程式を解くとか、変数xにとにかくありったけの数字を突っ込んでみるとか、そういう才能がないと美しい数学の国に住むことはできないようですが、ふらっとその国を訪れることはできそうです。とはいえ言語が全くわかりません。
しかし作中にいくつも引用される定理や公式を直ちに理解することはできなくても、この本を読み進むことはできます。語られる時代があちこち飛んだり、同じところにまた戻ってきたり、読んでいて混乱することもないではありませんが、数学の国の住人に魅了されるとそんなことはたいした問題ではありません。
折しもこんな話題が。
私も解説できるほどちゃんとわかっていませんのでわかっている人の助けを借ります。
連続する素数の剰余が等しい場合の方が等しくない場合に比べて出現する頻度が少ない
Oliver-Soundararajanのプレプリントについて - インテジャーズ
ということのようです。
この本で描かれる素数への旅は、終章近くに来ると量子物理学と出会い、朝永振一郎先生の本を読んだ後の私にも少しはわかるワクワク感を味わうことができました。
それはランダム・エルミート行列の固有値の間隔の振る舞いと同じじゃないか
物理学者のフリーマン・ダイソンさんがゼータ関数のゼロ点の分布についてヒュー・モンゴメリーさんから話を聞いただけで発した一言らしいのですが、なんで話聞いただけでわかるん…。でも全然関係なさそうに見えた複数の事柄になにかしらの関連性があるかもしれないと思うだけでテンション上がりますよね。
全然理解できないのにおおっ!と思ってしまう数学と物理学の邂逅。未だにリーマン予想は解決されておらず、この本も未来へ思いを馳せて終わるわけですが、私も相変わらず数学がわからないのに数学の本を読み続けてしまいそうです。
読んでたらそのうち少しはわかるようになるのかしら?