自閉症
なぜこれを買ったのか?買ってちゃんと読んだのか?わからないシリーズ第2弾。そのものずばりのタイトルです。
この本を読み始めた印象は、とにかく、愛に溢れているということ。題材とストレートな題名からすると意外でした。文章自体はとても簡潔かつ論理的、客観的であり、症例について淡々と紹介されています。にもかかわらず、読んでいると「この先生は仕事だからとかそういう義務感じゃなく、どうやったら自閉児と同じ目線で相対することができるか真剣に向き合ってこられたんだな」と思えるのです。
玉井先生だけではなく、文中で紹介される症例に関わった他の先生たちも同様です。逆に考えると、このころは今よりも時間に追われず、一人一人にしっかり関わることのできる環境だったのかなと思うところもあります。今はとにかく効率と結果を求められるので、先生方もここまでのことはなかなかできずにいるのではないかと推察してしまいました。
自閉症や発達障害について知見やデータがかなり集まっているので、ここまでやらなくても対処できるようになった、とも言えますけどね。今ではゲノム解析や原因遺伝子の追求など、高度な取り組みも行われていますし、まだまだ無理解があるにしても、この本の執筆当時と比較すれば随分自閉症に関する情報が得られるようになっています。
わたくしなりの努力はしてきたつもりであるが、こうすればなおる、という方法は見出しえなかった。残念ながらそれは、事実であり、事実であると認めて次の一歩を考えることが、少しでも未来への前進の土台になるのではないであろうか。
この本はこの一文で締めくくられています。
玉井先生の没後20年ほど経とうとしている今、その頃と比べても自閉症の研究は日々進んでいると実感します。(私は現場にいるわけではありませんが)
この分野に限らず、事実を事実と認めてその次へ進むことを考えることが、科学的なアプローチにつながるのではないかなと思いながら読了しました。結局なぜこの本を買ったのかよくわからなかったんですが、これを買った当時の私、えらいぞ。