Sea of Tranquility

しずかのうみ

省察 はじまりの鼓動 / meditatio I awakening

2006年2月、WOWOWスクランブル放送されていた哲学用語が飛び交うプログレッシブアニメ。本放送中も気にはなっていたんですが、ぼーっとしてたら終わってしまっていました…今年に入ってからも再放送があったみたいなんだけどそれすら間に合わず。今になってハマってしまったのでDVDをレンタルして見始めました。しくしく。受信料がぁ。
いろんな意味で「攻殻機動隊」あたりと比較されることがあるようだけど、それはちょっと安易な関連づけのような気もします。そのわけは終盤まで見続ければわかるかも。

  • リル・メイヤーとビンセント・ロウとモナドラクシーが出会う

その時、すべてを理解した

のはビンセントの中の人なのかなあ。信号待ちで立ちゴケしてなにかに気づいたのか?それにしても初っ端登場するのはどう見ても大塚芳忠が入ってる人だが(違)

まず暗い。画面が暗い。特にこの1話、ほとんどホラーといってもいい。まあ、異形の怪物が暴れまくる側面もあるから、ホラーならホラーでもいいんですが、後半の画面レイアウトなんてマジホラーですよ。
アントラージュ型オートレイヴ、ドロシーに説教されるビンセントの前に置かれたアルファベット文字のシリアル、牛乳を注ぐとこの回のサブタイトルでもある"AWAKENING"という文字が浮かび上がる。凝ってるなあ。この文字列もまた最終局面で大きな意味を持つものだったりする。この作品、最終話まで見てまた1話に戻ってくると最初から仕掛けられていた伏線をたくさん見つけることができて楽しい。それはすごいカタルシスなんだけど、この暗い画面とセリフの多さに飽きられて途中で切られたら元も子もないので、総体的に見るとずいぶん損な仕掛けだなあとも思ったりして。
シナリオ中にあった「汚名を挽回する」などという激しい誤用もなんとかならなかったものか!シナリオライターのうつけ!と最初は憤ったものですが、21話まで見ると壮大なネタであったことがわかります。ここも「仕掛け」のうちだったか。

そこにあるのは、良き市民の顔。
この街の望む人間の顔だ。
つまらない顔。
でも、彼らをそんな風に見下ろす私こそ、不必要な因子なのかも。

リルのこのモノローグが全編を通じて彼女の行動を動機づけている。
ドーム市実力者の孫という恵まれた境遇にあり、わがままのし放題な彼女が他方では常に持つ自己反省という二律背反。これがあるからリルはただのイヤミなおねえちゃんではなく、行動に根拠のあるキャラクターとして造型されている。お見事。

この時点で、タイトルロールでもある「プラクシー」の存在について
桎梏(リルの祖父)・・・しっかり把握している
リルの主治医デダルス・・・微妙に把握している(検体の管理をしていたから)
警備局長ラウル・・・言葉だけはなんとか聞いたしデダルスからの説明も受けた
リル・・・実物には出会ったがなにがなんだかわからず
ビンセント・・・まったく自覚なし
という状況。

そして、Bパートにおいて、彼女は運命の人と出会う。いや、別にその前に既に会ってたけど。それにしてもずいぶんエロい出会いだった…本編でももう少しエロくてもよかったなぁこの二人は(ぉぃぉぃ)

そんな一日でした。

この回で一番好きな、リルのセリフ。