Sea of Tranquility

しずかのうみ

虐殺器官

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

時間軸では後の話になる「ハーモニー」を先に読んだのでどうかな?と思ったのですが、特に前後のつながりが重要なお話ではなかったので違和感はありませんでした。 物騒なタイトルの割にロマンティックなお話だったなぁ、というのが読後最初の感想でした。 女性が主人公だった「ハーモニー」と比較すると、感情移入という点でこちらはちょっと難しかった面もあって、なかなか一日で読破するというわけにはいかず、時間をかけてじっくり読んだのですが、クライマックス以降急転直下、という展開でもなく、淡々と話が進んでいった感があります。 主人公の男性はほんとにロマンチストだなぁ、という感想は今でもずっと引きずっています。 ロマンチストだからこの結末を選んだのかもしれないな、と思います。

主人公さんは全然アメリカ人っぽくないんですが、というか登場人物で国籍アメリカとされている人たちは、表面上「うまく翻訳されたアメリカのTVドラマ」で使っている文法に忠実な台詞をしゃべっているだけで、根っからのアメリカ人ではないなーという印象があるのですが、アメリカ人にもオタクがいるように、日本人よりもっと繊細なアメリカ人はいるだろうし、そういう人が人が当たり前に死んでいく世界で意外と有能に生き残っていてもふしぎじゃないよね?と思えるような説得力、描写力はさすがでした。 ラスボスに当たる人の背景の書き込みがもう少しあってもよかったかなぁ。 でもそんなの斟酌しようがしまいがこの結末だったんだろうから、あんまり関係ないかな。